箸荷(はせがい)紅茶は、兵庫県多可郡加美区箸荷(はせがい)地区で作られている“地紅茶”です。
地紅茶は、兵庫県内で“箸荷紅茶”を含めると3カ所のみに産地があり、全国規模では560種を超えて存在しています。
しかし、箸荷紅茶が誕生した当初はまだまだ全国的にも多くはありませんでした。
加美区では、昔から各家庭で飲むためにお茶を育てていましたが、
高齢化が進み放置されることが多くなったそうです。
14年前、このままではもったいないと、緑茶に変わって取り組み例の少ない紅茶の研究を地区の女性約30人(現在の「箸荷紅茶の会」)で始めました。
製法は違っても日本茶と紅茶は同じ品種、休耕田に苗木を植え直し専用の茶畑にしたそうです。
それこそが「箸荷紅茶」の生まれた瞬間でした。
箸荷紅茶は、無農薬、有機肥料で栽培されています。
箸荷地区は昼夜の寒暖差が大きいため、香りの高い茶葉が育ち、鑑定士からはダージリンに似ているとの評価も受けたとか。
毎年5月の中旬頃に、全て“手摘み”で茶摘みをするそうです。
それ故に大量生産はできません。
地紅茶は地酒と同じく、その年の気候などによって毎年風味が微妙に変わります。
(本当に微妙な違いで、なかなか区別するのは難しいそうです。)
地紅茶ならではの特徴なのかもしれません。
「箸荷紅茶の会」は、現在14〜15名で行われています。
代表の今中照子さんにお話を伺いました。
「箸荷紅茶作りは、“まちづくりの一環”なんですよ。
ここは何も無い所だけれど、茶葉を育てることで、話しをしたり交流のキッカケになればと思っているんです。」
「阪神間の一部百貨店などにも卸していますが、基本的には地元(多可郡)が中心です。
地元のカフェのメニューにあったり、道の駅などでも購入できますよ。」
「地元の人に、おいしいって言って飲んでもらった時。それが一番嬉しいです。」
とっても素敵な笑顔で、そう答えてくださいました。
紅茶のほかに、製粉しブレンドした「紅茶うどん」や、
その粉を使用した「紅茶クッキー」なども販売されています。
元々の生産量が多くないため、これらも地元の道の駅などでしか購入できません。
(個人的には紅茶クッキーが大好きです…。)
「畑を拡大し、販路を拡大してほしい…」今までにそんな声もあったそうです。
それでも重労働な手摘みにこだわり、今の形態を続けているのは、目が行き届く“安心”のため。
茶葉を作る“過程を大切”にされているからこそなのだと感じました。
これからも続いていく“箸荷紅茶”づくり。
箸荷という地区の大自然を肌で感じ、美味しい空気を吸いながら
丁寧に育てられた茶葉を手で触れ収穫する姿は、今後も必ず残していきたい農村風景の一つだと感じました。